ナポリ人日本珍道中Vol.1 ナポリ人は二重人格!? ルチア−ノ氏が待っていたのは一番奥のVIP席。
「ブォナセーラ!」「サルーテ」 「グラッ ツェ!」……私は席につくなり聞いたことのあるイタリア語を
かたっぱしから並べて みた。(私のかたっぱしとは所詮こんなもんである) すると、
からかわれるかと思い きや、ひとつひとつの言葉にきちんと答えてくれた。そのうち、何を食べても
「ブォ −ノ!」を繰り返す私に「お前、そればっかりだな」というようなジェスチャー付き の
笑顔をくれたりする。陽気なイタリア人を前に言葉の壁はないようだ。ただ笑ってい るだけでも、
何となく楽しい。そんなもんです。(私だけ?)
 しかし、そこにワインが運ばれてくると、ソムリエジャコモの表情が一変。彼が頼 んだワインは
ナポリ近郊で作られる『ヴェルメンティーノ』。テイスティング用にワ インの注がれたグラスをくるり
と回し、目を閉じグラスに鼻を近づける。香りを確認 すると、目を閉じたままワインを口に含ませる。
そして、ゆっくりと喉の奥に流し込 む……。その姿からは先程のおちゃめな笑顔を想像できない。
一連のしぐさがまるで 呼吸をするかの様にごく自然に私の目に映った。「彼らはいつもこうなんですよ。
ちょっと前まで女性の話でおちゃらけていたかと思うと突然表情を変え、別人のよう に語りだすんです。
あなどれませんよ。イタリア人、とくにナポリ人は」
 確かに… 気付くとジャコモはもう先程の穏やかな表情に戻っていた。
そこからはテイスティン グ講座の開始。ワインの注ぎ方・グラスの持ち方・香りの嗅ぎ方・口への
含み方…… 立ち上がり、実演までしてくれた。ジャコモいわく、白ワインは果実の香り、もしく は花の香
りの2つに大きく分けられるそうだ。ちなみにヴェルメンティーノはほのか に桃の香りがするとのこと。
「ワインは赤ちゃんのように丁寧に扱わないとすぐに味 が悪くなるんだ。海の向こうの日本に運んでいる
のにこのボトルは状態がいいよね。 ナポリ人は地元のワインに誇りを持っている。ここは南のワインが充
実して嬉しい よ。」そう言ってしげしげとラベルを見つめていた。 文章:EVA(梶原千恵)。